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【SDGsランキング2020】日本とスペインのSDGs達成状況を比較してみた|海外のSDGs

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国連が制定した2030年までの世界共通目標「SDGs(Sustainable Development Goals)」。日本とスペインのSDGs達成度や今後の課題を比較してみました。

 

ここ数年「サステナビリティ」や「SDGs」という言葉を耳にすることが増えました。地球上の環境問題や貧困・差別への対応、ジェンダー格差の課題などは、それを切り取るシーンによって私たちの生活に身近なものからグローバルな視点で取り組むべきものまで幅広いテーマです。今回は私が今住んでいるスペインと、生まれ育った日本という2つの国に焦点を当てて、SDGsの達成度と今後の課題、それぞれの国の良いところなどについて考察してみました。

 

▼スペイン政府が公表しているスペインのSDGsについての記事(2020年6月執筆)はこちら。SDGsはスペイン語でODS?スペインのアジェンダ2030について - ばるログ in バルセロナ

 

「SDGs」ってなんだっけ?

まずは、そもそも「SDGs(Sustainable Development Goals)」とは何なのか?という話を簡単にします。SDGsは日本語で「エス・ディー・ジーズ」と呼ばれていて、「持続可能な開発目標」を意味します。これは2015年の国連サミット上で採択された、2030年を達成期限とする世界共通の17つの目標です。なかなかピンとこない人もいると思うのでもっと噛み砕いて言うと、「地球上すべての人で力をあわせて、未来のために今ある課題を解決していこう!」ということ。

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持続可能な開発目標 | 国連開発計画(UNDP)

 

【POINT】SDGsとは?
  • 正式名称は「Sustainable Development Goals(サステナブル・デベロップメント・ゴールズ)」
  • 日本語で「SDGs(エス・ディー・ジーズ)」と呼ばれ、持続可能な開発目標という意味
  • 2015年国連サミットで全会一致の採択
  • 2030年が達成期限
  • 17個の目標と169のターゲットが掲げられている

 

世界各国のSDGs達成度を数値化してランキングを発表しているのは、「持続可能な開発に関する報告書2020/Sustainable Development Report 2020」というレポートです。これはSDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)という機関が毎年発表している報告書で、国連の公式モニタリングツールではありませんが、公的機関が提供している情報(世界銀行、WHO、ILOなど)や、研究機関、非政府組織などが公開しているデータを使用して分析されています。

 

今回はこのレポートを参照して、日本とスペインそれぞれの国のSDGs達成状況と今後の課題を解説して、お互いの国の良いところも紹介したいと思います。

 

日本のSDGsランキングは「17位」

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(画像引用元:https://dashboards.sdgindex.org/profiles/JPN

「持続可能な開発に関する報告書2020/Sustainable Development Report 2020」のレポート上では、SDGs17個のゴールのロゴマークが達成状況のレベル別に4色で色分けされています。

 

【POINT】色別に示される達成度合い

●緑:SDG achieved(SDGs達成)

●黄:Challenges remain(課題が残る)

●オレンジ:Significant challenges remain(相当な課題が残る)

●赤:Major challenges remain(最重要課題)

 

2020年3月版のレポートでは、日本の順位は「17位(スコア:79.17)」でした。以下で評価ポイントを解説します。

 

努力が必要な点

日本のMajor challenges remain(最重要課題)と評価された項目は以下。

  • GOAL5「ジェンダー平等を実現しよう」:国会における女性議席数の目標は半数の50%ですが、2020年は9.91%にとどまり日本の大きな課題となっていす。また男女の賃金格差が大きい点も課題です。
  • GOAL13「気候変動に具体的な対策を」:エネルギー(石油、天然ガス、石炭、天然ガスなど)の消費から生じるCO₂の排出量(tCO₂/capita)が改善されていません。
  • GOAL14「海の豊かさを守ろう」:排他的経済水域(EEZ)内で乱獲された魚類、崩壊した資源からの漁獲量は年々悪化しており、とくに注意が必要です。また、国の管轄下にある海水が化学物質、過剰な栄養素、病原体、ゴミによってどの程度汚染されているかを測定するクリーンウォータースコア(海洋健康指数)も悪化しています。
  • GOAL15「陸の豊かさも守ろう」:絶滅の恐れにある野生種のリスト(レッドリスト)をもとに絶滅リスクを数値化した指標が悪化。
  • GOAL17「パートナーシップで目標を達成しよう」:国民総所得(GNI)に占める政府開発援助(ODA)の額は目標に対して停滞しています。

達成に向け評価されている点

日本のSDG achieved(このままSDGs達成に向けて軌道に乗せよ)と評価された項目は以下。

  • GOAL4「質の高い教育をみんなに」:あらゆる人に対して公平で質の高い教育を提供し、すべての人が生涯学習の機会にある点で総合的に高い評価となりました。
  • GOAL9「産業と技術革新の基盤をつくろう」:回復力のある社会基盤(道路・水道・電気・公共交通機関など)が構築され、包括的で持続可能な工業化とイノベーションが促進されているとして評価されています。
  • GOAL16「平和と公正をすべての人に」 :犯罪率が低く安全で、財産権が保護され、児童労働が行われていない点などが評価されています。

 

スペインのSDGsランキングは「22位」

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(画像引用元:https://dashboards.sdgindex.org/profiles/ESP

 

2020年3月版レポートでのスペインの順位は「22位(スコア:78.11)」でした。以下で評価のポイントも見てみましょう。

 

努力が必要な点

スペインのMajor challenges remain(最重要課題)と評価された項目は以下。

  • GOAL2「飢餓をゼロに」:成人の人口に占める肥満(BMI値30以上)の割合が2000年は18%でしたが2016年時点では23.8%に増加。栄養レベルも悪化しています。
  • GOAL13「気候変動への対応」:CO2排出量(tCO2/人)は2014年まで減少し続けていましたが近年再び微増傾向にあります。

 

Significant challenges remain(相当な課題が残る)とされる項目もいくつかピックアップします。

  • GOAL8「働きがいも経済成長も」:スペインでは若者の失業率が長年の課題となっています。15~29歳の若者のうち就業・教育・訓練のいずれも受けていない者の割合は2013年時点で27%、2018年には19.6%まで改善しましたが、新型コロナの影響による経済活動停止で来年の結果は再び悪化すると予想され、引き続き大きな課題となっています。
  • GOAL9「産業と技術革新の基盤をつくろう」:GDPに占める研究開発費への支出割合の長期目標スコア3.7に対し現状は1.2という結果で、目標との差が大きい項目です。
  • GOAL10「人や国の不平等をなくそう」:ジニ係数(所得の不平等さを図る指標)に課題が残ります。また66歳以上の高齢者のうち、収入が総人口の中央値世帯収入を下回る割合が2014年以降増加しています。
  • GOAL14「海の豊かさを守ろう」:国の管轄下にある海水が化学物質、過剰な栄養素、病原体、ゴミによってどの程度汚染されているかを測定するクリーンウォータースコア(海洋健康指数)が2019年は48.64。2012年は51.79から悪化しました。

 

評価されている点

スペインはSDG achieved(SDGs達成)の評価を受けたGOALはありませんでしたが、Challenges remain(課題が残る)の中で高評価だった項目をいくつか掲載します。

  • GOAL3「すべての人に健康と福祉を」:平均寿命は「83歳」で世界第3位のスペイン。1位は日本の84.3歳。
  • GOAL5「ジェンダー平等を実現しよう」:国会における女性議席数の目標は半数の50%ですが、スペインでは2019年に47%、2020年44%とかなり達成に近づいています。(日本の女性議席数は9%)
  • GOAL7「エネルギーをみんなに、クリーンに」:総電力出力あたりの電気および暖房用燃料燃焼によるCO₂排出量は、目標値の0に近づいており評価されています。

 

日本とスペインのSDGs達成度、大きな違いは◯◯

今回「持続可能な開発レポート/Sustainable Development Report 2020」のランキングを参考に、日本とスペインの課題やSDGsの進捗をじっくり見てみたことで、それぞれの国の良いところを改めて実感しました。

スペインは男女差を埋めるための制度整備が日本よりも進んでいることを日々スペインの現地ニュースを見ていても感じていましたが、本レポートで客観的なデータを知ることができたのはよかったです。

一方、日本の産業の力強さやイノベーションに対する積極的な姿勢はスペインでは感じることのできない強みだと思います。

個人的に最も大きな違いだと感じたのは「GOAL5:ジェンダー平等を実現しよう」の進捗です。スペインでは2021年1月1日から男女ともに16週間の育児休暇を取得することが法律で定められました。この話はまた違う記事で詳しく書きたいと思います。

Permiso de paternidad 2021: el año en el que se equipara con el de maternidad

 

SDGs達成度ランキング上位30位はこちら

日本とスペイン以外の国の順位が気になる方もいると思いますので、最後にSDGs達成度スコアが高い上位30ヵ国のランキングを掲載します。スウェーデンやデンマーク、フィンランドなど北欧諸国が上位にランクインしています。そのあとに西欧諸国が続き、ニュージーランド・日本・韓国などの東アジア/オセアニア地域も比較的高いスコアを示しています。

興味深いのは、世界GDP(国内総生産)ランキングで1位のアメリカ・2位の中国が、SDGsランキングでは上位30位に入っていないこと。アメリカは31位(スコア:76.43)、中国は48位(スコア:73.89)でした。GDPに代表される経済的な指標だけで国の豊かさを判断していた時代から、SDGsランキングで分析されているような「持続可能性」という今まで数値化されてなくて見えなかった豊かさにも関心が集まる時代になってきていると思います。

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まとめ 

ここ数年、日本のメディアで「SDGs」というキーワードを耳にする機会が増えてきましたが、海外のSDGsに関する情報がまとめられている記事はまだまだ少ないと感じたので、今回は日本とスペインのSDGsの達成度や課題を比較してみました。

2021年の個人的な目標(やりたいこと)は「毎月1本はSDGsやサステナビリティに関する記事を書くこと」。個人的に興味がある分野なので、楽しみながら書いていけたらと思います。

最後までよんでいただきありがとうございました!

 

【参考にしたサイト】

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