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なぜバルセロナでデモ?カタルーニャ独立運動って何?気になる疑問をまとめ

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カタルーニャ独立運動、バルセロナのデモなどについてまとめました。

2019年10月14日、カタルーニャ州独立の是非を問う住民投票に関与した独立派幹部にスペイン最高裁が下した判決に対し、不服の意を示すデモがカタルーニャ州の至る所で起きています。数か月前からバルセロナに身を置く私自身、スペインやカタルーニャの政情は日々勉強中で、質問されてもスッと答えられないことがまだまだあるので、頭の整理をかねて個人的に気になったことをまとめてみました。

デモってどんなことが行われているの?

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このデモはバルセロナ市内に限らず、バルセロナが位置するカタルーニャ州のあらゆる街で起きています。デモ隊によりバルセロナ市内では主要道路が封鎖され、路線バスも足どめ。バルセロナのエル・プラット国際空港でも座り込みの抗議デモが行われ、空港行きのバス・電車・メトロの運行も止まってしまいました。今夜開催予定だったサッカーの試合も中止となるなど影響は幅広い様子。このデモ活動は、今週いっぱい続くとみられます。

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ニュースでは空港までの道路が封鎖されたために車を降り歩いて空港へ向かう人たちの姿も報道されました。バルセロナご旅行中の方はニュースやネットで最新の情報を収集して備えてください。(バルセロナ市内の最新運行情報をチェックできるサイトをまとめた記事はこちら。→バルセロナの道路、バス、鉄道、メトロの最新運行情報をチェックできるサイトまとめ - ばるログ in バルセロナ

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なぜこのようなデモが、バルセロナをはじめカタルーニャ州の至る所で起きているのでしょう?

 

なぜバルセロナでデモが行われるの?

スペインとカタルーニャの歴史

現在のスペイン中央政府とカタルーニャ自治州はもともと違う国でしたが、1700年代のスペイン承継戦争にカタルーニャが負けてから、スペイン中央政府によってカタルーニャ民族のアイデンティティを奪われるような仕打ちを受けてきたという長い歴史があります。

有名なのは言語統制。現在、世界で「スペイン語/Spanish」と認識されている言語は、正確にはスペインの首都マドリッドがあるカスティージャ地方で話されている「カスティージャ語」です。カタルーニャ地方には「カタルーニャ語」という伝統的な言語が存在しますが、民族のアイデンティティともいえるカタルーニャ語の使用を禁止されていた時期もあります。また治世や税制で理不尽な処遇をされてきた積年の思いがカタルーニャの人たちにあるということを、まずはじめに理解しておく必要があります。

近年のカタルーニャ独立機運の高まり

2010年代に入りスペインの景気が後退しはじめると、スペイン中央政府とカタルーニャ自治州のあいだでは税収や政治などの意見がまとまらないことが増加。独自の文化・芸術を擁し、世界屈指の観光都市として成功、経済的にもスペインの他地域を牽引しているカタルーニャですが、不景気の中スペインの他の地域では税金が軽くなる措置を受けたのにカタルーニャは重課されるなど、カタルーニャの人にとっては理不尽に思える施策が打たれるなどの背景がありました。スペインを離れ自分たちの国を作ったほうが豊かになれるという意見も出るようになって独立運動は徐々に高まり、カタルーニャ州議会でもカタルーニャ独立を支持する議員の割合が増えていきました。

2017年のカタルーニャ独立住民投票

2017年10月1日、スペイン中央政府が反対姿勢を示し、裁判所も違憲であると判断する中、カタルーニャ自治州はスペイン中央政府からの独立の是非を問う住民投票を実施しました。

しかし住民投票当日はスペイン警察によって投票所が封鎖されたり、投票箱が押収されたりして、投票の意思があっても警察の妨害により投票できなかった人も多く、実際に投票できたのは有権者の半数以下でした。そのような状況下で行われた住民投票でしたが、独立賛成票は90%を超えました

カタルーニャ州独立宣言

その後、当時のカタルーニャ州首相プチデモン氏らによって「カタルーニャ独立宣言書」に署名がされましたが、2017年10月末にはスペイン最高裁がカタルーニャ独立宣言の無効を決定しました。カタルーニャが独立宣言した当時、国際社会のいずれの国もカタルーニャを国家として認める発言はしませんでした。EUや国連などの組織もスペイン国内の対話によってこの問題を解決しなさい、と述べるにとどまりました。

独立派幹部へのスペイン最高裁判決

2019年に入ってからようやく拘束されていた独立派幹部や政治家の裁判が開始されました。そして2019年10月14日、スペイン最高裁が2017年のカタルーニャ独立の是非を問う住民投票を強行した独立派の幹部12人に対し、最高で禁固13年や罰金などの判決を下しました。判決は反乱罪よりもやや軽微な暴動罪となったものの、公金横領の罪も課されました。この判決へ不服を示し、カタルーニャ州各地でデモが行われています。

「投票」という権利で意思を示すことは民主主義の基本的な権利にもかかわらず、住民投票の実行に対して実刑判決が下されたことは、人権が守られていない、民主主義が守られていないと訴えるデモなのです。

2017年当時カタルーニャ州首相だったプチデモン氏はスペイン国内にいられなくなり、現在はEU内の他国に逃れていますが、再度欧州の司法当局に引渡し要請(逮捕状)が出されているとのこと。一方のプチデモン氏は、毅然とした態度でスペインにおける彼の政治的・経済的なすべての権利を取り戻すことを要求しています。

 

なぜカタルーニャ州は独立したいの?

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カタルーニャの人たちは「自分たちはスペイン人である前に“カタルーニャ人”である」という意識が強く、学校教育ではカタルーニャ語で授業が行われたり、公共施設ではカタルーニャ語で文書が表示されたりと、過去の弾圧で失われかけたカタルーニャのアイデンティティを取り戻す取り組みがとても精緻に行われています。

この取り組みは一夕一朝で陽の目をみるものではなく、世代を超え長い年月をかけて大切に受け継がれ、それがカタルーニャの人たちの誇りとなっています。

スペインは中央政府が執り行う政治と、自治州が行う自治政治があり、各自治州にはある程度の裁量が認められています。しかしながらカタルーニャ州が作った自治憲章を中央政府によって修正されたり、自分たちが住む地域をより良くしようと自治をしても納得のいかない税制や法律で縛られることもあり、自由を制限されていると感じる日々が積み重なりました。このままでは自分たちの自由が再びスペイン政府によって奪われてしまう、そして自由を求め独立を叫ぶ声が大きくなった、と理解しています。

また、自分たちの自治州首相が国を追われたり、独立の意思を持ち積極的に行動した活動家たちが逮捕される事態を目の当たりにしたカタルーニャの人たちからしてみれば、民主主義国家でありながら政治に対する意思表示をすることが「扇動」や「反逆」の罪に問われてしまうとあっては黙っていられないのだと思います。

スペイン中央政府の態度

一方のスペイン中央政府も「民主主義的に」判断しこの問題に対する決定をしていると明言しています。スペインという国の立場から考える民主主義、カタルーニャという地域(自治政府)の立場で考える民主主義、見る角度によって問題の捉え方や判断の仕方は変わるし、ひと言で民主主義といっても「民」は多様で、多数決だけで解決する問題ではないのだと思います。

考察

実際にデモを目の当たりにして、生活者としては交通機関が使えないことは不便だし、生活インフラが機能しなくなる可能性への不安が積もります。また一部のデモ参加者や警察が暴力的な行為に至る様子は理解しがたく独立問題の本筋とズレているため、デモに対して懐疑的に思うところもあります。

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空港や道路封鎖の影響で多くの観光客やビジネス来訪者が大変困っているのは明らか。観光が主要産業であるカタルーニャの住民がこのようなデモを行った結果、経済的に受けるダメージの大きさは計り知れません。デモをすることで困るのは自分たちではないのか?と平和ボケしている私は思ってしまいますが、それでもカタルーニャの人たちにとっては、たとえ自分たちの産業や生活がダメージを受けたとしても絶対に守りたい「カタルーニャ人の自由と誇り」があるのだとも感じています。(追記:暴徒化したデモ隊の中にはカタルーニャ独立“反対派”の人たちが混ざっている可能性もあるようです。)

 

今年からバルセロナに住んでいますが、家族や友人から「なぜバルセロナでデモがあるの?カタルーニャ独立運動って何?」と聞かれることも多く、スペインを訪れたことがない人やスペイン語学習者でない人にはまだまだこの問題は知られていないんだなと感じています。香港のデモでは空港封鎖がきっかけで世界中の人に香港の内情が知れ渡り、関心を持たれるようになりました。意思を持つたくさんの人の力の総和によって物事の流れが変わることもあるかもしれません。

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ちまみに今回のデモは「Tsunami Democrátic」というそうです。人海戦術によって道路や空港を使えなくして移動が必要な人を足止めする様子とそのネーミングは、東日本大震災時の津波で空港や道路が壊滅した記憶を想起させられるので、正直心に痛みを感じます。

世界のあらゆる場所で自由を求め「独立」や「離脱」などの方向に進もうとする動きが盛んな今、カタルーニャの真ん中で世の中の風を感じることができるのは、かけがえのない経験だと感じます。この記事はカタルーニャ情勢に進捗があれば随時更新していこうと思います。