バルセロナ市では警戒事態のため公園や歩道に植えることができなかった植物を市内の市場で配布しています。市民みんなでバルセロナ中のバルコニーを花で満たそう!という美しいイニシアチブを紹介します。
花や植物が恋しい日々
3月14日にスペインの警戒事態宣言が発令されてから1ヶ月半以上、お花屋さんの営業も止まっています(スペインではタバコ屋は営業してるのに、花屋さんは閉まっていて、スペイン人にとっては花よりタバコなのか...なんて思ったり)。春の陽気が日ごとに増す中で外出禁止が続いていて、せめて家に花を飾りたいと思うことや、花屋さんや花農家さんの状況が気になることがありました。
一年の中で最も花が美しい季節、そして本来ならバルセロナでは薔薇を贈り合う時期(4月23日はサン・ジョルディの日)というのもあって、花が恋しくて恋しくて堪りませんでした。いつでも手に入ると思っていたお花がなかなか手に入らなくなって初めて、私こんなに花が好きだったのか〜!と気付きました。お花や植物は見ているだけで、そこに在るだけで、元気を与えてくれる存在だと改めて認識。
スペイン語で「Éramos felices y no lo sabíamos.(大切なものは失ってから気づく)」という言葉が身に染みます。
バルセロナ市の市場に花が戻ってきた
そんな気持ちになる瞬間がありながらも、おこもり生活にはすっかり慣れて、オンラインのスペイン語会話レッスンを受講したり、日本の友達とオンライン飲み会をしたり、ネット動画を観たりと、テクノロジーのおかげで退屈しない日々を過ごしています。
そして昨日、週に一度買い出しをする近所の市場に行ったところ、なんと...
花が置いてあるではありませんか...!!
切り花はなくて、植え替え用だけでしたが、久しぶりに生のお花が並んでいるのを見ただけで幸せな気持ちになりました。
警戒体制のため街に植えられなかった植物たち
買い物を終えて帰宅し、家でスペインのネットニュースを見漁っていると、バルセロナ市のお知らせが目に入りました。それによると、先ほどの市場のお花は、警戒体制中で市内の公園や歩道に植えることができなかった80,000株もの植物を無駄にしないために、バルセロナの市場で買い物した人に配布しているものだということがわかりました。花を持ち帰り、市民みんなでバルセロナ中のバルコニーを花で満たそう!という美しいイニシアチブです。
(一部抜粋約)4月28日から5月7日までの間、合計80,000の植物が、市場で買い物をした人に配布されます(市場に人が押し寄せないようにオンライン購入を推奨している様子)。これらの植物はすべて、4月に市内のさまざまな地域に植えなければなりませんでした。(引用元:
なお植物の配布は以下2つの日程で各市場ごとに行われます。
- 4月28日(火):Des de Boqueria, Barceloneta, Santa Caterina, Sant Antoni, Concepció, Provençals, Sant Gervasi, Tres Torres, Carmel, Horta, Vall d’Hebron, Sant Andreu, Bon Pastor, Guinardó, Montserrat, Trinitat, Mercè, Llibertat.
- 5月6日(水): Des d’Hostafrancs, Marina, Sants, Estrella, Ninot, Clot, Lesseps, Sagrada Familia, Galvany, Les Corts, Sarrià, Sant Martí, Poblenou, Besòs, Felip II, Canyelles, Ciutat Meridiana, Fort Pienc, Abaceria i Guineueta.
植物の育て方をレクチャーする動画も用意されています↓
バルセロナ市が市場で植物を配る2つの目的
このイニシアチブには2つの目的があります。
一つは、新型コロナウイルス対策の影響で深刻な影響を受け、季節の植物の多くの売上を失っている園芸業界をサポートするため。そしてもう一つは、市民生活の不可欠な場所として厳しい期間を支えてくれた市場にスポットを当て、地元市場での購入を促進するためです。
またこのイニシアチブを通じて、都市の緑を増やすことの重要性を伝えることも期待されています。バルセロナ市では植物を受け取った人に対して、バルコニーや窓に植物を置いた写真をハッシュタグ「#PlantamAlBalcó」を付けて共有しましょう!と呼び掛けています。なおその写真は5月22日の国際生物多様性デーにリリースされる資料に使用することになるそうです。
4つのフェーズを経て段階的規制縮小予定のスペイン
スペインはこのあいだの日曜日から子供の散歩が許可されたり、昨日は首相会見で段階的に規制を緩和していく計画が発表されたりして、状況は少しずつ良くなってきています。
→→→ スペインのペドロ・サンチェス首相は4月28日に会見を行い、4つのフェーズを最低8週間(各フェーズ少なくとも2週間)かけて、州ごとに6月末までに新しい通常体制へ移行する計画を発表。4つのフェーズで想定される対応は以下のとおり。
- 【Fase0】5月2日から大人も短時間の散歩や運動のための外出が可能に。
- 【Fase1】中小の商店が営業再開。ただし距離2メートルなど厳格な対策が条件。高齢者や体の弱い方向けの利用時間を設定。テラスを限定的に開放、ただし定員は30%まで。ホテルや宿泊施設は共有エリアを除いてオープン。アスリートのためのジムでの個別トレーニングが可能になる。礼拝は定員の30%まで。
- 【Fase2】飲食店の店舗営業を許可。プロスポーツの再開を許可。映画館、劇場、展示会などの再開。ただし定員の30%まで。礼拝所は50%まで。屋外での催し物は最大400人。学校は9月まで再開されないけれど、働く両親のためのサポートを開設予定
- 【Fase3】州間の移動が柔軟に行えるようになる。一定の制限はあるけれど、各施設の定員は50%まで拡大可能になる。
ここで気を抜いてはいけませんが、うれしい気持ちはたっぷり表現して、喜びを噛みしめたいと思います。
厳格な外出禁止策がとられた数週間のあいだ、スペイン中の建物のバルコニーや窓はご近所さん達とコミュニケーションを取ったり、街の様子を眺めリフレッシュしたりできる役割を果たし、多くの人にとって尊い空間になりました。我が家のバルコニーにも花を迎えて、ご近所さんたちの目を楽しませたり、自分たちが癒されたりする、気持ちの良い空間にしていきたいなぁなどと思いを巡らせています。
※参考にしたサイト: